Monthly Column マンスリーコラム
AI時代に問われる「働く意味」と「キャリアの再定義」 ―プロティアン・キャリアが示す未来
田中研之輔先生を迎えたプロティアン輪読会を終えて
先日、当研究会のサロンにおいて「プロティアン」輪読会の最終回が開催されました。後半には著者である田中研之輔先生にもご参加いただき、最新の企業情報やキャリアの考え方について貴重なお話を伺うことができました。
今回は、その時のお話と、私自身が感じたことを交えながらお伝えしたいと思います。
AIの進化がもたらす“人にしかできない価値”
AIの急速な進化によって、私たちの働き方は大きな転換点を迎えています。「仕事がAIに奪われる」という不安が語られる一方で、実際には“人にしかできない価値”が、これまで以上に求められる時代が始まっているように感じます。
今回の田中先生のお話では、プロティアン・キャリアを軸に、AI時代の働き方やキャリア支援のあり方について、多くの示唆が語られていました。
業務の効率化は、人間が「最後の対話」に集中するため
現在、企業現場ではAI活用が急速に進んでいます。多くの大手企業では、会議の音声データや業務データをAIに学習させ、生産性向上や組織改善に活かす取り組みが広がっています。
ただ、それは決して「人を不要にする」ためではありません。むしろ、キャリア支援や人材育成の領域では、AIを補完的に活用しながら、人間が最後の対話や意思決定を担う方向へ進んでいます。 田中先生のお話の中で特に印象的だったのは、AIによって「やらされ仕事」から解放される可能性が高まっているというお話でした。
これまでの社会では、長時間労働や我慢を伴う働き方が、当たり前のように続いてきました。しかし、AIによる効率化が進めば、人は単純作業や準備業務から解放され、本当に価値のある“人に向き合う時間”に集中できるようになります。
キャリアコンサルタントに求められる、感情を受け止める役割
たとえば教育現場では、出席管理や教材作成をAIがサポートすることで、先生は生徒一人ひとりへの伴走や対話に、より多くの時間を使えるようになります。
これはキャリアコンサルタントにも同じことが言えるのではないでしょうか。 情報整理や分析はAIが得意でも、相談者の表情や感情の揺れを受け止めながら、その人らしい答えを一緒に見つけていくことは、人にしかできない役割です。
「仕事中心」から、自分らしく生きる「人生中心社会」へ
また、AI時代は「仕事中心社会」から「人生中心社会」へ移行していくとも語られていました。 これまでは、“仕事が人生の中心で、余暇はその残り”という価値観が強かったように思います。
でもこれからは、ライフ(人生)が中心にあり、その一部としてワーク(仕事)が存在する時代へ変わっていく。つまり、働くことは生活を犠牲にするものではなく、自分らしく生きるための一部になっていくのです。
多様化する「キャリア資本」:ライフや社会関係も大切な価値に
その中で重要になるのが、「キャリア資本」という考え方です。 従来は、スキルや経験といった“ビジネス資本”が重視されてきましたが、これからはそれだけでは足りません。
人とのつながりである「社会関係資本」、さらに趣味や学び、没頭体験などを含む「ライフ資本」も、大切な価値になっていきます。
たとえば、料理やヨガ、マラソン、茶道など、一見仕事とは関係ない活動であっても、その人自身の幸福感や感性、人間的魅力を育てる重要な資本になります。AI時代だからこそ、“人間らしさ”が価値になるということなのだと思います。
AIを味方につけ、自身をアップデートし続ける姿勢
そして、この変化の時代において、キャリアコンサルタント自身も変化に適応し、学び続ける姿勢がこれまで以上に求められていると感じました。 キャリア支援の理論や社会構造は、時代とともに変化しています。
従来の知識だけでは、今の相談者が抱える悩みや不安に十分応えられなくなっている場面も増えているのではないでしょうか。 だからこそ、AIを実際に使いこなしながら、最新のキャリア理論や海外動向にもアンテナを張り、自分自身をアップデートしていくことが大切になります。
英語論文もAIで翻訳できる時代ですので、「読めないから無理」という壁は確実に低くなっています。大切なのは、“学び続けようとする姿勢”そのものなのだと思います。
結びに:「自分はどう生きたいのか」という問いに応える伴走者へ
また、キャリアコンサルタントは単なる「キャリアの相談役」ではなく、相談者の人生全体に寄り添う存在へと役割が広がっていくのかもしれません。仕事だけではなく、ライフスタイルや価値観、幸福感まで含めて伴走できる存在が、これからますます必要とされていくように感じます。
もちろん、変化には不安もあります。でも、「専門家でなければ無理」「年齢的に遅い」といった壁も、AIによって少しずつ低くなっています。
誰もが学び直し、新しい挑戦を始められる時代になってきています。 AI時代に本当に大切なのは、「仕事がなくなるのか」という恐れではなく、「自分はどう生きたいのか」という問いなのだと思います。
そしてキャリアコンサルタントには、その問いに寄り添いながら、相談者だけでなく、自分自身も変化を恐れず学び続ける姿勢が求められているのではないでしょうか。
これからの時代は、“働くために生きる”のではなく、“自分らしく生きるために働く”時代へ。 AIは、その変化を後押しする存在になっていくのだと感じました。

松舘 敦子
資格
2級キャリアコンサルティング技能士
認定心理士
産業カウンセラー
交流分析士インストラクター
モチベーションマネジャー
アスリートキャリアコーディネーター