Monthly Column マンスリーコラム

2025年11月号

変化の時代をしなやかに生きるキャリア

みなさん、こんにちは。いわてキャリアコンサルタント研究会の藤村七美と申します。

9月通常総会の際にご挨拶させていただきましたが、まだ研究会に入って間もない会員です。

2年前の10月、研究会の設立15周年記念事業として田中研之輔先生が来盛されると聞き、プロティアンキャリアの日本で第一人者の先生を呼べる力のある研究会?すごい!と、興味がわき、講演会に参加させていただいたのがご縁でした。

プロティアンキャリアとレジリエンスの関係性

私は、東日本大震災後のPTG(心的外傷後の成長)への気づきから、「レジリエンス」を高めることの大切さを強く感じ、惨事ストレスに限らず、職場のストレス等でも大事な概念となるのではと「心のしなやかな回復力(柔軟性)」についての学びを重ねておりました。

そこにタナケン先生の「プロティアンキャリア」の本を読み、講演でその概念をお聞きして、この二つの概念は深く関連しており、現代のキャリア形成において相互に補完し合う関係なのではと考えるようになりました。

ここに3つの関係性を述べます。

1つ目は「変化への対応力」です。

プロティアンキャリアを実践するには、常に変化する環境や予期せぬ出来事(リストラ、業界の変化など)に直面します。この時、精神的な打撃から速やかに立ち直り、次の行動へ移るためにはレジリエンスが不可欠です。

2つ目は「自律性の維持」です。

自己主導でキャリアを進める中で困難に直面した際、レジリエンスが高い人は挫折しても立ち直り、自分の価値観に基づいたキャリア選択を継続できます。

そして最後は「相乗効果」です。

レジリエンスを高めることはプロティアンキャリアを築く土台となり、自律的なキャリア形成の経験は、結果として個人のレジリエンスをさらに強化するのではと考えます。

「変化を前提としたキャリアの哲学・戦略」であるプロティアンキャリアと、「その変化の過程で遭遇する困難を乗り越えるための精神的な能力・技術」であるレジリエンスは、非常に密接な関係性があるのではと感じました。

若き日の夢とやりがい旅館の娘として育ち、ホテルマンとして20年

ここからは少し私自身の話をしたいと思います。

私は、調理人の父と女将である母の長女として生まれ、小学生の頃から日本料理旅館の家業を手伝いながら、常に周りにお客様がいる生活をしておりました。

茶の間で宿題をしているとなじみのお客さんが入ってきて、お酒や煙草を呑みながら仕事の愚痴が始まります。それが日常になっており子供心に「大人って大変なんだなぁ。働くってツライことなんだなぁ」と、感じていました。

習い事も、日舞や三味線、書道に算盤など商家の娘としての稽古事で毎日忙しく「将来は芸妓になって女将になろう」と本気で思っていました。

キャリア教育など微塵もない時代です。当然「女が大学など必要ない」的な世界でもあり、商業高校に進み学校が終わると喫茶店でアルバイトに精を出していました。「働くことはツライこと」という子供の頃の価値観は全くなくなり、アルバイト代で好きな洋服を買い、友達と遊び惚けて勉強もせず、早く社会に出てお金を稼ぎたい!などと、考えるようになっていました。

そんな風でしたから就職先も将来のキャリアプランも立てず、「初任給の高い会社」というだけの理由で、ホテルへの就職を決めました。元々商家で育ち、アルバイトで接客に慣れていたせいもあり体を動かすことも苦にはなりませんでした。

ただ驚いたことに、気軽に入社してしまったホテルは「スゴイ人たち」の集団で、今でいうキャリアのモデルだらけ。仕事に対する真剣さ、情熱、今なら「エンプロイアビリティ(雇用されうる能力)の高い人ばかり」でした。

そこで切磋琢磨し、今につながる「ワークエンゲージメント(仕事に恋をする)」「活力」「熱意」「没頭」の充実した心理状態で働くことが出来ました。

当時はまずは「お客様に喜ばれること(CS)」「従業員のやりがい・満足度(ES)」「会社としての利益」を掲げて県の赤字経営から1年で黒字に転換していました。とにかく勢いがあり、夢とやりがいを得られた場所でもありました。

私が営業部の課長になったころには、平米当たり売上日本一のホテルになり、取材や研修依頼がとにかく増えたことを思い出します。

限界を迎えたときの葛藤ホテル業の激務、心身の疲れ、バーンアウト

「この仕事は自分の天職だ」と思い働いてきた私ですが、責任の重い立場になるほど見えないストレスは重くのしかかりました。

ある時、人に会うのが怖いと思うようになりました。身体も鉛のように重く感じられ、おかしいと思い病院へ行くと「うつですね。少し休みましょう」と言われました。確かに8か月全く休んでいませんでした。そうなるのは当たり前です。燃え尽きバーンアウトしてしまいました。

それなのに私は、休むよりも「会社にこれ以上迷惑かけられない。今すぐ辞めなきゃ・・・」と、今ならありえない早まった決断をしてしまったのです。

自分が自分ではないような心身の恐ろしい疲れを抱えながら、20年のホテル人生を終えました。

迷いと決断 「このままでいいのか? もう一度挑戦したい」
〜心理学との出会い、学びなおし

40歳近くで計画なしに退職してしまった私ですが、ハローワークの担当者から(今思えばカウンセリングだったのでしょうか?)「あなたはカウンセラーが向いているかも」と言われ、失業保険をもらいながら講座に通い、通信大学で心理学を学びました。

卒業まで10年近くかかりましたが、この学びは私を成長させてくれました。心理学の理論や療法を学ぶうちに、ホテルでのお客様とのやり取りが、まさに臨床の現場でもあったのだと気づきました。たくさんのお客様の悩みや困りごとをお聴きしていた場面が思い起こされ、学びながら理解を深めることが出来ました。

退職した後、お世話になったお客様たちから、「自分の会社であなたの話をしてほしい」とのご依頼が来るようになり、いつの間にか「カウンセリングマインドの接遇」「職場のメンタルヘルス」「マネジメント・ハラスメント」や「コミュニケーション」等の研修や講演、さらには社員のカウンセリングなど任せていただけるようになりました。

なぜその道を選んだか転機と資格 「トリプルライセンスの取得」

結局、フリーランスとして歩み始めたわけですが、最初はご依頼の仕事内容が接遇やマナーなどの研修講師の仕事が多く、たくさんの人の前で話すことの緊張感で体調を崩してしまうこともあり、自分がこの先のキャリアとして、「これが本当にやりたいことなのか?」と考えるようになりました。

そのころ就職氷河期の最後の時期だったこともあり、大学でキャリアのカウンセリングをしていても、相談の内容は「どこにも就職が決まらない。もう死んでしまいたい」と泣き崩れる学生のメンタルを支えることでした。

「もっと何か専門性を身につけたい」という思いが募り、キャリアコンサルタント(当時はまだ国家資格ではなくキャリアカウンセラーという資格だったと思います)とシニア産業カウンセラーの受験を決めました。

8月にキャリアコンサルタント、11月にシニア産業カウンセラー受験という強行軍でしたが、かなりの領域で重なるところもあり、8月まではキャリア中心で、それ以降は精神医学の部分を徹底して勉強しました。

45歳の挑戦でした。

資格取得後は仕事の範囲も大きく広がり、自衛官の制服を着ない部外カウンセラーの仕事は去年まで17年続けることが出来ました。

他にもハラスメント法の改正で複数の企業との顧問契約も増えましたが、2028年からのストレスチェック義務化も踏まえ、高ストレス者が気軽に面談できるようにと公認心理師の受験も挑戦しました。

何度もトライして59歳でやっと取得できました。(YouTubeの受験講座に感謝!)

トリプルライセンスを持つことで、「働く人」の「キャリア」と「メンタルヘルス」に対し、より深く、多角的にアプローチできるようになりました。お互いの専門領域の相乗効果もあり、キャリア支援の専門性に加え、他の資格のスキルを活かすことで、メンタルヘルスの課題がキャリアに与える影響を深く理解し、包括的なサポートができるようになりました。

組織に勤めていたころは、資格取得もリスキリングもしようとは思いませんでしたが、フリーランスになったら、まず信用していただけることが重要です。そのための資格や学びであると考えています。

年齢なんて関係ない。 大切なのは“これから”をどう描くか

フリーランスのいいところは、時間が比較的自由にできるところです。そして何より定年もありません。心身ともに健康であればいつまでも続けることが出来ます。

しかも「ながら」生活もできます。「親の介護をしながら」も、「実家の料理屋の出前を手伝いながら」も、調整さえ可能なら自由にできます。AIも書籍も独学しながらも楽しい時間です。

数年前から「支援する人を支援したい」気持ちで、ゆっくり学んだりお茶したりできるセミナーハウスのようなものを計画し、来年くらいに実現できそうです。

これからの将来や年齢に不安を抱くより、今やりたいことやこれから何をして生きていきたいのかを楽しく描いていきたいと思っています。よろしかったらどうぞお立ち寄りください。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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藤村七美

CO.COROサポート 代表
国家資格 キャリアコンサルタント
   〃    公認心理師
シニア産業カウンセラー・SV
アドバンス・レジリエンストレーナー
健康経営アドバイザー
雇用環境整備士(Ⅰ種・上級Ⅱ種・Ⅲ種)他